“子育て無免許運転”をなくせ


 近年、脳科学研究が進み、しつけと称する体罰が子供に想像以上に悪影響を与えることが分かってきた。

 福井大学の友田明美教授の子供の脳画像分析では、ひどい体罰を受けた児童の脳は、感情や理性に関わる右前頭前野の容積が約2割、認知に関わる左前頭前野の容積が10%強も萎縮することが明らかになった。まさに「体罰は百害あって一利なし」というわけだ。

 政府はしつけと称した体罰、度重なる虐待死事件を受けて、児童虐待防止法等改正案に親権者や施設職員らによる体罰禁止を盛り込む方向だ。

 ただ、法を規定すれば体罰や虐待がなくなるわけではない。ある民間の調査では、しつけと称する体罰は必要と考える、「体罰容認」は5割以上に上る。

 学校教育法は体罰禁止を謳(うた)っているが、部活動の指導では、親や子供の側にも体罰を良しとする空気があって、旧態依然たる古い指導法がまかり通ってきた。

 そもそも体罰と言っても、軽く叩(たた)くとか、何度も叩くとか、その程度は幅広い。どこまでを体罰とするか、定義付けは難しい。

 体罰や虐待はさまざまな要因があっての結果である。ひどい体罰をしてしまう親の多くは、孤立育児によるストレスや貧困を抱えていたり、親から虐待を受けて育っていたり。両親の不仲やDV(ドメスティックバイオレンス)といった家族関係の病理が垣間見える。

 核家族の中で、子供をどう育てたらいいか分からない。無意識に体罰やスマホ育児といった不適切な子育てをしている親も多い。

 法整備は必要だが、児童虐待防止法制定以降、虐待は減るどころか増え続けている。子育ても車の運転と同じ、無免許では事故が起こるのは当たり前である。まず結婚・出産から子育てまで、親教育し、子育て力をつける。子育て無免許運転をなくすことが先決だろう。

(光)