小中スマホ解禁、依存が高まらないか懸念


 柴山昌彦文部科学相は、小中学校でスマートフォンを含む携帯電話の持ち込みを原則禁止するなどした指針の見直しを検討する考えを示した。

地震を受け保護者が要望

 文科省は2009年1月の通知で、携帯電話は学校の教育活動に必要がないとして、小中学校への持ち込みを原則禁止すべきだと求めた。高校でも、校内では使用を制限すべきだとし、持ち込み禁止も考えられるとの指針を示した。

 ただ児童生徒の携帯電話やスマホの所持率は年々上昇しており、17年度には小学生で55・5%、中学生では66・7%となった。10年前と比べ、その割合は大きくなっている。文科省は「(禁止は時代に)合っていない」と判断したという。

 スマホに関しては、大阪府教育庁が小中学校への持ち込みを許可する方針を決めたと発表。「保護者が認めた場合だけ」などと定めたガイドラインの素案も明らかにした。昨年6月の大阪北部地震は通学時間帯に発生し、保護者や児童の間で混乱が起きたため、携帯電話の持ち込みを認めるよう要望が寄せられていた。

 しかし、災害発生時には通信が途絶することも考えられ、必ずしもスマホが役に立つとは限らない。小中学校への持ち込みを解禁した場合、教員の目を盗んでゲームに熱中するなどスマホへの依存や、校内で盗難に遭うことに対する懸念も残る。登下校中の歩きスマホで交通事故が増えることを心配する声も出ている。

 スマホへの依存が高まれば、視力や体力の低下につながるだけでなく、犯罪に巻き込まれるケースも出てくる。警視庁が15年7月に東京都内の小学5年~高校3年の男女約3000人を対象に行った調査では、スマホやインターネットへの依存が強いほど、ネット上で知り合った人と実際に会うなど危機意識が低くなる傾向にあることが分かった。

 スマホ解禁はメリットよりもデメリットの方が大きいのではないか。ネット交流サイト(SNS)でのいじめの増加にもつながりかねない。

 フランスでは昨年9月から、小中学校でのスマホ使用が禁止された。フランスでは16年時点で12歳から17歳のスマホ所持率が9割を超えており、スマホを持っていないことで恐怖に陥る依存症「ノモフォビア」が認められる児童生徒の増加が問題となっている。

 日本でも厚生労働省の調査によれば、中学・高校生の1割超にネット依存の疑いがある。ネット接続に使っている機器はスマホが中学生の7割超、高校生の9割超に達する。子供を見守るためにスマホを持たせたいという保護者の気持ちは分かるが、文科省は深刻な状況を踏まえ、小中学校への持ち込み解禁については慎重に検討すべきだ。

家庭でルール定めたい

 子供のスマホ依存を防ぐためには、まず家庭で使用時間を制限したり、深夜の使用を禁止したりするなどのルールを定めることが求められる。「早寝早起き朝ごはん」などの生活習慣をきちんと確立し、スマホの適切な利用のための環境を整えたい。