世界日報 Web版

いじめ自殺、画期的判決を防止に生かせ


 大津市で2011年、中学2年の男子生徒が自殺したのはいじめが原因だとして、遺族が元同級生3人と保護者に計約3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁は「自殺の主な原因は元同級生の行為」として、元同級生2人に計約3700万円の支払いを命じた。

「予見可能だった」と判断

 判決によると、男子生徒は元同級生から首を絞められたり、顔に落書きをされたりした。元同級生が体を押さえ付けて死んだハチを食べさせようとしたり、口に粘着テープを貼り手足を縛ったりしたこともある。男子生徒は11年10月に自宅マンションから飛び降り自殺した。

 裁判で同級生側は「殴るなどの行為はあったが、いじめではなく遊びだった。自殺との因果関係はない」などと主張していた。

 しかし、男子生徒に対する行為は「遊び」などと言えるものではなく、暴力以外の何物でもない。

 大津地裁の西岡繁靖裁判長は「(2年生の)2学期から男子生徒に対する暴行などが次第にエスカレートした」と指摘し、精神的に追い詰める行動の積み重ねで無力感・絶望感を形成させて「自殺に及ぶことは予見可能だった」との判断を示した。

 今までのいじめに関する裁判では、加害者が自殺を予測できなかった場合は責任を負わないとする判断が示されてきた。今回の判決はこれを覆すものだ。加害者は軽い気持ちでいじめることが多いが、被害者を死に追いやった場合、重い賠償責任を負うことを示した画期的な判決だと言えよう。

 男子生徒の父親は「苦しむ多くの子供を救う判決になった」と述べた。今回の司法判断を、いじめ防止に生かさなければならない。

 男子生徒の自殺はいじめ防止対策推進法成立の契機ともなった。同法は、いじめで心身や財産に重大な被害が生じたり、長期間の欠席を余儀なくされたりした疑いがある場合を「重大事態」と定め、学校や教育委員会に調査などを求めている。

 文部科学省によると、2017年度に小中高校と特別支援学校で起きた重大事態は過去最多の474件。いじめの認知件数は約41万件で、1985年度の調査開始以来、初めて40万件を超えた。

 認知件数の増加は、いじめを積極的に把握して解決しようとする取り組みの結果でもある。しかし、全体の25・6%は1件も認知していないとしており、被害が隠れていることが懸念されている。

 神戸市で16年10月に市立中3年の女子生徒が自殺した問題では、教員が同級生から聞き取ったメモを市教委幹部らが隠蔽(いんぺい)していたことが発覚した。国会では超党派で法改正作業を進めており、いじめを放置した教職員を懲戒処分とする規定の新設などが検討されている。防止への取り組みを強化してほしい。

道徳教育を充実させよ

 大津市のいじめ自殺問題は、道徳の教科化のきっかけともなった。

 学校での道徳教育を充実させ、生徒を健全育成することで、いじめの根絶を図りたい。