世界日報 Web版

三浦雄一郎さんの挑戦


 正月の2日、プロスキーヤーの三浦雄一郎(86歳)さんが、南北米大陸最高峰アコンカグア(標高6961㍍)に挑戦するために日本を出発した。

 三浦さんは70歳、75歳、80歳と、エベレスト登頂のたびに名語録を残している。

 16年前、70歳でエベレスト最高年齢登頂を果たした報告会見を取材した時のことは鮮明に記憶している。この時は、早々に高山病にかかったり、途中長期の強風に見舞われ何日も待機を余儀なくされるなど、70歳という年齢を抜きにしても、神様が守ったとしか言いようのない奇跡の登頂だった。

 会見で「自分の力ではどうすることもできない時は、神様に祈って通るしかない」と極限状況の心境を語り、次の夢を聞かれ「80歳になったら札幌大倉シャンツェのラージヒルに挑戦したい」と言っていた。ところが、心臓の大手術後、75歳でエベレスト再度登頂。80歳の時は、通常の倍の16日間かけて見事登頂を果たした。この時、三浦さんは成功の鍵を「年寄り半日仕事を心掛けた」と語っている。

 筆者もそうだが、還暦を過ぎたあたりから抗し難い機能低下への不安感は、時に新しいことへの挑戦を断念させる理由になる。

 「年寄り半日仕事」。ゆっくりでも時間をかければ、必ず目標に到達できる。この言葉は団塊の高齢者ばかりか、さまざまなハンディや障害を持つ人々にも夢にチャレンジする勇気と希望を与えてくれた。

 今回のアコンカグア挑戦記者会見では「究極の老人介護登山」と評し、記者団を笑わせた。同行のスタッフ6人は、息子の豪太さんを筆頭に全員がエベレスト登頂組という、万全の体制である。予定では16日から登頂を始め、成功すれば、86歳のスキー滑降の雄姿を見せてくれる。

 帰国後の報告会で今度は何を語ってくれるのか。三浦語録を楽しみに、祈りのエールを送りたい。(光)