「共同養育」の視点で考える


 両親以外の祖父母、叔父叔母、兄弟姉妹、血縁のない人が子育てに関わることを“アロペアレンティング”という。米国の進化生物学者のジャレド・ダイアモンド氏がその重要性を提唱し、「代理養育」「共同養育」と訳される。

 先日、養育支援に携わる専門家や福祉関係者が集まり、養育支援の研究報告会が開かれた。そこでアロペアレンティングに関して、福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授が興味深い知見を発表していた。氏の最新の脳研究によると、共同養育者の数が多いほど子供の成育機能、ワーキングメモリー、情動に関わる領域のネットワークが発達していることが分かってきたという。

 ダイアモンド氏はアロペアレンティングが子供の生存率、社会性の発達に寄与していると言ったが、共同養育の環境が子供の発達上いかに大事かということだ。

 虐待には至らなくとも、夫や家族、近隣集団の協力が得られず、孤立育児でストレスを抱え、しつけと称した不適切な養育をしているケースは少なくない。

 共同養育の視点で考えると、若者が結婚しない、子供を産まないという少子化も、子供を安心して産み育てられない環境では、合理的な行動選択なのだろう。

 ニュース報道で凄惨(せいさん)な乳幼児虐待や子捨て事件を聞くと、「人の親なのか」と、つい厳しい目を向けてしまう。園児の声を騒音と言い、電車内のベビーカー連れを迷惑がる。社会の視線が子育てを難しく大変にさせてしまっていることに気付かされる。

 長年、たくさんの虐待相談に当たってきた友田氏は、問題を指摘することでは子供も親も救えないと言う。

 ヒトの子育ては共同養育が前提にある。そうであればアロペアレンティングの視点を生かし、共同養育の仕組みをつくっていくことが大事なのだろう。

(光)