健康保つ責務


 健康診断の胃のX線で「異常」を認め、内視鏡での精査が必要と出た。自覚症状はまったくないので、意外に思ったが、指示に従い、胃カメラ検査を受けた。消化器内科の医師が「じっくり診ますから、太めのカメラを入れますね」と語るので、ちょっと緊張した。検査後、ポリープはあるが、「問題なし」の説明を受けて一安心。

 撮った映像をモニターに映して「ここは食道とのつなぎ目です」などと、医師の丁寧な説明を聞きながら、初めて見る自分の胃の内部の美しさに感動を覚えた。そして、「長い間、よくぞその役割を果たし、私の生命を支えてくれたものだ。これからは暴飲暴食を慎みねぎらわねば」と、胃が愛(いと)おしく思えた。普段、自分の臓器のことを意識することはないが、映像で見て、健康診断の教育効果の高さを思い知ったのだ。

 「生病老死」という言葉があるように、死に至る過程で、病や老いは人間の宿命である。しかし、病気で苦しんでいる人には酷に聞こえるかもしれないが、神様から与えられた体を可能な限り健康に保つことは、人間の責務であろう。

 凡人は病気や高齢で、体が不自由になって初めて健康で元気であることの大切さを知る。そういう筆者も、数年前から「高血圧」と診断されて、薬の世話になっているから、偉そうなことは言えないが……。

 筆者が今回、胃に異常がなかったのは、日頃の節制というよりも、親からの遺伝に負うところが大きいと思われる。身内にがんを患った人間がいないので、そういう家系なのだろう。一方、がんになりやすい体質を持つ家系もあるから、健康については一概に言えないから難しい。

 だが、自分の健康に責任を持つのは本人であることを自覚させるのは教育の役割。もちろん、不運にも生まれながらにして体が弱かったり、大病を患ったりする人を思いやる心を養うことも忘れてはならない。(森)