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就活ルール、廃止すれば学業への影響大


 経団連の中西宏明会長が、2021年春以降入社の学生の採用活動に関し、面接の解禁日などを決めた就職活動ルール(採用選考に関する指針)を廃止する意向を表明した。企業の採用活動、学生生活への影響が大きいだけに波紋が広がっている。

多くが解禁前に内定

 現行の就活ルールは、会社説明会が「3年生の3月1日」、面接などの選考は「4年生の6月1日」を解禁日としている。中西会長の廃止表明は唐突な印象を与えたが、背景には現行ルールがほとんど形骸化しているという事情がある。

 人手不足で企業の人材獲得競争が激しくなっている。今後大きな景気後退がない限り、この傾向は強まっていくことが予想される。

 このため、解禁前にインターンを青田買いに利用する企業などが出てきている。また経済のグローバル化によって、経団連に所属せず、就活ルールに縛られずに通年採用を行っている外資系企業やIT(情報技術)企業が増え、それら企業に優秀な人材が流れている。

 中西会長は記者会見の最後に「(ルールを)守っていない企業が圧倒的に多い。経団連以外は先にやっている。おかしい」と語っている。

 実際リクルートキャリアによると、今年6月1日時点で大学生の就職内定率は68・1%で、就活を行う学生の3分の2以上が解禁日に内定を得ている状況だ。一方で、近年の新卒採用で計画通りの人数を確保できている企業は半数に満たない。

 このように就活ルールの形骸化が相当に進んでいることは事実だ。しかし、ルール廃止は学業への影響が大き過ぎる。これまでは学業の評価が就職活動に結び付いてきたが、ルールがなくなると、学生たちの就職活動の開始時期が早まり、学業に集中できなくなる恐れがある。

 1年生から、就職情報、企業情報集めを始めるような状況も常態となる可能性がある。しかし多くの大学で1年は、教養課程で専攻分野を決め、就職とは離れたところで広く知識や教養を身に付ける期間である。長い目で見れば、それがもたらすものは学生の人生にとって決して小さくないし、有為な人材の育成という点でも重要だ。

 安倍晋三首相は「(学生の)皆さんが4年間しっかり勉強した成果を正しく企業側に評価してもらいたい」と語り、就活ルールは守るべきとの見解を表明。文部科学省は何の相談もなかったと困惑している。経団連は企業の論理だけでなく、日本をより豊かで競争力を持つ国家にすることを考えてほしい。

 とはいえ中西会長の提起は、日本特有とされる「新卒一括採用」、さらには「終身雇用」「年功序列」という企業慣行の見直しにもつながるものだ。グローバル化の中で、日本企業が競争に勝ち抜いていくには、こうした慣行を見直し、柔軟な雇用環境をつくり出していくことが、時代の要請となっている。

柔軟な採用慣行づくりを

 これを機に、通年採用の部分的導入など、より柔軟な採用、就業の慣行をつくり上げていく必要がある。産官学が連携して新しいルールを定めるべきだ。