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遠くから思う故郷の夕暮れ


 数日前の朝、自宅の近くで赤とんぼを1匹見つけた。先月の猛暑が2度の台風接近で少し和らぎ、立秋(7日)を過ぎたので暦の上ではもう秋だ。この蒸し暑さももう少し我慢すれば、空気が心地よい本格的な秋がやって来る。

 「夕焼け小焼けの赤とんぼ…」。赤とんぼがわんさか飛び交う中でだんだん日が落ちていく。そんな思い出は故郷の夕暮れと結び付いている。もう一つ、故郷の夕暮れで忘れられないのが『夕焼けとんび』の歌だ。

 「夕焼け空がマッカッカ とんびがくるりと輪を描いた ホーイのホイ」

 三橋美智也の歌だが、トンビがどんな鳥かも知らない幼い頃に、一緒に住んでいた一番下の叔父が夕暮れが近づく川辺で歌っていたので、どういうわけかこの歌詞の部分だけ覚えている。大きくなって全体の歌詞を読むと、東京に働きに出た兄を懐かしむ曲だった。一緒に暮らしていた(伯父の)2人の兄が東京ならぬ大阪に就職していった後なので、心に強く感じるところがあったのだろう。

 故郷の夕暮れと関連して省くことができないのが『夕焼け小焼け』だ。幼い頃からよく聞いていたが、今でも近くの自治体では午後5時になると、毎日そのメロディーが流れるので時々耳にする。面白いのは、日が暮れたので烏(からす)と一緒に帰ろうと言っている件(くだり)だ。烏は昔から身近な鳥ではあるが、少し言い過ぎではないのかとも思うが、それでも家路を急ぐ夕暮れにぴったりくるのは、あのやや哀愁を帯びた「カー、カー」という鳴き声のためだろう。

 盆休みで故郷に帰省している人も多かろう。残念ながら筆者は今年も帰省できない。故郷が大切なのは、自分のルーツに出会えるからだ。父母、兄弟はもちろん、友人や自然環境も成長する自分に掛け替えのない追憶を残してくれた。遠くからでもルーツを思い、明日の活力としたいものだ。(武)