阪大入試ミス、外部の指摘に迅速な対応を


 大阪大学が昨年2月に実施した入学試験の物理で、出題と採点のミスによって誤って30人を不合格にしていた。

 このほか、在籍中の学生9人が第1志望の学科で不合格になっていた。阪大は30人を追加合格とし、希望者の入学や転学科を認めて授業料などの補償や慰謝料の支払いなどを行うとしているが、受験生を混乱させた責任は重い。

 誤って30人を不合格に

 この試験は3850人が受験した。ミスがあったのは2問で、問題の数値設定を誤る出題ミスと、複数の回答が導けるのに一つだけを正答とした採点ミスだった。昨年12月に外部からメールで数式などが入った詳細な説明を添えた指摘があり、複数の教員が調査していた。

 この入試問題の作成をめぐっては、15回以上の会議が大学で開かれ、10人以上の教員らが関与していた。それでもミスを防げなかった。

 ミスがあったこと自体も問題だが、見逃せないのは昨年6月と8月にも外部の指摘があったにもかかわらず、適切な対応をしなかったことだ。

 6月には高校教員らで入試問題を検討する「物理教育を考える会」が「複数の正答があるのではないか」と指摘し、8月には予備校講師が「理論的に誤りがある」との意見を寄せた。しかし、この時は入試問題を作成した理学部教授2人だけで検討し、ミスに気付かなかった。学内で情報の共有もされなかったという。

 この時点で問題作成者以外の教員が調査していれば、ミスを発見できた可能性がある。誤って不合格にした受験生にももっと早く対応し、9月入学などの措置も取れただろう。

 阪大は「出題した教員に思い込みがあった」と釈明しているが、危機意識が低いと言わざるを得ない。受験生の将来に大きな責任を持っているという自覚に欠けているのではないか。猛省を求めたい。また、外部の指摘を軽視する体質があるならば改善する必要がある。

 大学入試のミスが、入学時期を過ぎてから判明したケースはこれまでにもあった。山形大学工学部では2001年、入試の採点ミスで90人を不合格にしていた。富山大学人文学部でも同年、過去の入試のミスで16人が不合格になっていたことが明らかになったが、同大学はミスを約2年間隠蔽(いんぺい)していたという。私立大でも同様の問題が生じている。

 今年の大学入試センター試験も行われ、これから本格的な受験シーズンの到来を迎える。今回の問題が受験生に影響を与えないか懸念される。

 入試は1点の差で明暗が分かれる。阪大はもちろん、他の大学もミスの防止に全力を挙げるべきだ。

 危機管理に力入れよ

 それとともに、万一ミスの指摘があった場合は迅速に対応することが求められる。

 阪大は外部の弁護士らを入れた検証委員会を設置し、ミスの原因や対応の遅れについて検証して年度内に報告書をまとめる方針だ。今回の問題を教訓に、危機管理に力を入れなければならない。