世界日報 Web版

脳科学が説く幸福学


 先日、宗教と脳科学分野の研究者が一同に会したシンポジウム「木魂(こだま)するこころと科学」が都内で開かれた。発表者の一人、前野隆司氏は幸福学の第一人者。脳科学の視点から「幸せとは何か」「どうすれば幸せになれるのか」「人を幸せにする製品やサービスの開発とは何か」「住民を幸せにする地域活性化とは何か」等、「幸福」をキーワードに未来社会を構想する、興味深いものだった。

 氏によると人間を幸福にする因子は「つながり」「感謝」「楽観」「ありのまま」という四つにあるという。つまり自然、人、社会とのつながり。そして不平不満の心を感謝に変え、前向きな心で、自分という存在を受容し、ありのままでいられる。こうした四つの因子を満たしている人はおのずと利他的な生き方をするようになっていると語っていた。

 幸福学の知見によれば、金、モノ、地位のように周囲との比較により満足を得る「地位財」による幸福は長続きしないが、自主性、自由、愛情などの「非地位財」による幸福は長続きするということ。幸せな人は総じて、創造性が高く、パフォーマンスが高く、利他的で、友人が多く、多様性を育み、物事に感謝をし、自己肯定感や自己受容が高い傾向にあり、成績や性格も優れているという。

 脳型コンピューター開発者で脳科学者の故・松本元博士は「愛は脳を活性化する」と提唱されていた。脳科学が愛を説き、人間の生き方を説く。宗教世界が扱ってきた無意識、心の世界に科学世界がぐいぐいと接近しつつあるようだ。

 前野氏は学校の道徳・倫理の時間に幸福学を教えていけば、一人ひとりの才能、能力を引き出すことができると「幸福の教育学」を提唱している。脳科学の成果が、子育てや幼児教育や学校教育に活用されていけば、もっと幸福の物差しで考える大人が育っていくのではないか。

(光)