家事労働がアートになる日


 かつて家事代行サービスは富裕層が利用するものだったが、最近は一般世帯にも利用が広がりつつある。

 これほど家電が進化しても、家事を軽減したいという主婦ニーズはなくならない。先日も、AI(人工知能)を搭載した全自動衣類折り畳み機のデモンストレーションを見て驚いた。AIロボットがTシャツやズボンやタオルを丁寧に折り畳み、衣類の種別ごとにクローゼットに仕分けしてくれる。1枚約10分、30枚くらい可能だが、所要時間は5時間という。シャツのボタンを留めたり、裏返しの服を戻したりはできない。

 人間なら10分程度でできる作業を機械に代行させると、1台180万円超の商品となる。将来、作業時間が短縮され、低価格になれば、導入する家庭も出てくるかもしれない。

 ただ、これで家事時間が短縮されるとは思えない。実は家電が進化した割には、家事時間は減っていない。国民生活白書によると、平日の女性の家事時間は昭和45年に4・37時間だった。50年後、家族は小さくなったにもかかわらず、1時間弱しか短縮できていない。男性はほぼ横ばいである。なぜかと言えば、例えば洗濯機の登場で洗濯は楽になったが、逆に洗濯しなければならない量、回数が増えた。結局、畳んだり、干したりする洗濯に付随する作業が増え、家事短縮にならなかったというのが調査研究で明らかになっている。

 家電の進化で家事が省力化されたとしても、人間の豊かさ願望が次々と新たな家事を生むようだ。今、高級炊飯器や焙煎(ばいせん)機が売れ行き好調という。自宅水耕栽培で好きな時に採りたて野菜を食したり。こうなると家事労働というより、生活を楽しむアートと言えそうだ。

 近未来にAIなどが家事の一部を代行するようになれば、家事は今より楽しいものになっていくはず。家事労働をめぐる夫婦のせめぎ合いも解消されるかもしれない。(光)