日教組委員長、露見した「教師失格」の体質


 日本教職員組合(日教組)の岡本泰良委員長が週刊誌で女性問題や組合費の私的流用疑惑を報じられ、「社会的責任」を痛感したとして先月辞任した。不祥事が生じるのは単に岡本氏個人の問題とは思われない。日教組は教師の組合として必要な存在なのか、抜本的疑問が突き付けられたと言ってよい。

 女性問題などで辞任

 岡本氏は「週刊新潮」(10月20日号)で、女性とホテルに入る写真や組合費の私的流用疑惑を報じられ、当初は疑惑を否定していた。日教組も取材に応じなかった。

 ところが日教組は先月末、岡本氏が「一連の報道によって、組合員や関係団体に対して心配や不信感を抱かせた」とし「社会的責任を重く受け止め、責任を痛感している」として委員長辞任を表明したと発表した。組合費の私的流用は「適切な会計処理がなされ、財政規律が確立」されていると否定し、女性問題は不問に付している。

 ならば、何が「社会的責任」なのか、不可解な辞任劇だ。この間、岡本氏自身の説明はまったくない。週刊誌報道をすべて認めたということか。いずれにしても無責任極まりない態度で、子供たちを導く教師の資格なし、と言うほかない。

 岡本氏は大分県教組の出身だ。同教組の教員組織率は90%に上る。全国有数の「日教組王国」で、2008年には県教委と県教組による「底なしの構造汚職」と呼ばれた教員採用汚職事件を引き起こしている。

 県教組は大分県の教育界を牛耳り、偏向教育もやりたい放題だった。公立校での国歌斉唱率は極めて低く、「ミニ懇談会」と称して保護者を集めて政治集会も開いていた。教員採用汚職も県教組との癒着から生じたものだった。

 ところが、組織率の高さや選挙の強さといった「組織内論理」で、岡本氏は日教組の書記長に抜擢(ばってき)され、今年3月の臨時大会で委員長に選出された。同大会では安全保障関連法廃止や米軍普天間飛行場の辺野古移設反対の特別決議を採択するなどイデオロギー色を強め、憲法改正反対の活動も活発化させてきた。

 その最中の今回の不祥事だ。これは日教組の組織体質と無縁では決してない。日教組の「教師の倫理綱領」(1952年採択)は「教師は労働者である」とうたい、「聖職者」との考えを排除し、権利ばかりを主張する教育観を学校に持ち込んだ。

 日教組が中高生向けの人権テキストとして推薦する『生徒人権手帳』(三一書房)は「自由な恋愛を楽しむ権利」「セックスするかしないかを自分で決める権利」などを掲げ、これをもって「子供の自己決定権」と称してきた。日教組が岡本氏の女性問題で責任を問わないのは、こうした権利意識からではないのか。

 教師の職業倫理確立せよ

 このところ教師のわいせつ行為などの事件が絶えない。これには断固たる措置を講じ、教師の職業倫理を確立せねばならない。不法な政治活動には教育公務員特例法を改正し、罰則規定を新たに設ける必要がある。

 日教組委員長辞任を単なる個人の問題と矮小(わいしょう)化せず、教師像を問う機会とすべきだ。