国際学力調査、課題克服し一層の向上を


 経済協力開発機構(OECD)が2015年に実施した国際学習到達度調査(PISA)で、日本は「科学的応用力」が前回12年の4位から2位に、「数学的応用力」が7位から5位に順位を上げた。

 一方、「読解力」は4位から8位に低下した。調査で浮き彫りとなった課題を克服し、生徒の学力を一層向上させたい。

 読解力で順位下げる

 PISAは、OECDが義務教育修了段階とされる15歳(日本は高校1年)を対象に00年から3年ごとに実施している国際学力調査。15年は72カ国・地域の約54万人が参加した。

 全参加国のトップは3分野ともシンガポールで、日本のほか香港、韓国などアジア勢が上位に入った。シンガポールは国家予算の2割を教育費に充てているという。

 日本は「PISAショック」と呼ばれた03年調査で平均得点や順位が全体的に落ちたため、文部科学省は「ゆとり教育」と決別。07年には基礎的知識に加え、PISA型の応用力を問う全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)を開始した。

 日本は、理数分野で小中学生の基礎学力を測る国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)でも好成績をマークしている。授業時間増や実験の重視など「脱ゆとり」路線が功を奏したと言えよう。20年度から順次実施する新学習指導要領の改定作業が大詰めを迎えているが、学習内容は減らさず、現行路線を継続する方針だ。

 一方、今回のPISAでは、読解力の平均得点が前回比22点減の516点に落ち込み、前々回の09年(8位、520点)と同水準となった。成績上位層が減少し、下位層が増えたという。

 03年調査では、読解力も8位から14位に急落。11年度以降の学習指導要領には「言語活動の充実」が盛り込まれ、12年には4位に順位を上げた。それだけに、今回の結果には教育関係者の間でも戸惑いが広がっている。

 今回は、調査方法が従来の筆記型からコンピューター使用型に全面移行したため、文科省の担当者は「紙の試験に慣れた日本の生徒は操作に戸惑ったのでは」と推測している。だが、OECDは「コンピューターと紙の間に大きな違いがあるとは認められない」としている。

 もう一つ、読解力が低下した原因として挙げられるのは、長文に触れる機会の減少だ。スマートフォンの急速な普及によって、無料通信アプリ「LINE」(ライン)やツイッターなどのインターネット交流サイト(SNS)を使った短文コミュニケーションが拡大したことが背景にある。

 国立情報学研究所の調査によると、中学生の少なくとも3割程度は社会科や理科などの教科書の文章を正確に理解できていない。主語、目的語、係り受けなどの構成が捉えられていない可能性が高いという。深刻な事態だと言わざるを得ない。

 読書量増やす工夫を

 また、月に1冊も本を読まない高校生は16年には57・1%に上った。

 読解力向上に向け、中高生の読書量を増やすための工夫が教育現場で求められる。