過剰な薬依存


 厚生労働省が今月末、2014年度の国民医療費が8年連続で過去最高を更新し、40兆円を突破したと発表した。近年、とくに増えているのが「調剤」だ。このニュースを聞いて、子供の頃のことを思い出した。

 小学生の夏休みに、友人と川に魚取りに行った時のこと。水中めがねを付けた友人が魚を刺すヤスを手に、さっそうと川に飛び込んだ。しかし、すぐに河原に引き返してきた。

 その理由はすぐに分かった。顔から血を垂らしていたのだ。飛び込んだはずみに、水中めがねが割れて、鼻のあたりを切ってしまったのだ。

 今の小学生だったら、大慌てだろう。しかし、友人と私はちっとも動揺しなかった。傷にヨモギの葉の汁を塗って、2人でまた遊び続けた。大人から消毒作用があると教えられていたのだ。

 これは一つの例で、私の子供の時代はちょっとケガをしたり、病気になったくらいでは病院に行かず、薬も使わなかった。私の記憶では、中学を卒業するまでに、病院に行ったのは2、3回ぐらいなもの。傷をつくったら「唾を付けておけ」、風邪を引いて熱を出したぐらいでは「寝ていろ」だった。誰かが「入院した」となれば、よほど重い病気だと思ったものだ。

 それはどの家でも同じだったが、人々の暮らしが豊かになるとともに、すぐ病院を頼るようになった。そして、薬を処方する医師は良い医師で、簡単には出さない医師は「ヤブ医者」と評判を落とす。そうなると、医師はもうかるからどんどん薬を処方するようになった。処方された薬をぜんぶ飲まず、次に病気になったときの備え薬をため込んでいる人もいる。こうして妙な“薬文化”が定着し、医療費を拡大させている。

 薬や医者にすぐに頼る文化を変えるカギは、教育だろう。せめて、副作用など、薬のデメリットを教える「くすり教育」にもっと力を入れるべきだろう。(清)