地方創生と私立大学の生き残り


 一般社団法人「レジリエンスジャパン推進協議会」のワーキンググループが今春出した家族人口政策の政策の提言「持続可能な家族・世代・地域を取り戻す」の中で、「私立大学の一部を、地方創生のプロデューサーの役割を果たす地域研究および人材育成機関として積極的に公立化する」という施策を提案している。

 地方創生の人材育成に力を入れている大学は既に在るが、ここでは「公立化する」がポイント。学生には奨学金を貸与し、地域おこし協力隊などを含めて地元に就職すれば返済を免除するという。

 18歳人口が減少に転じる「2018年問題」を控え、特に地方には消滅する大学も出てくると言われている。日本私立学校振興・共済事業団のまとめでは、今年の大学入試で入学者数が入学定員を下回った「定員割れの私立大学」は257校、全体の半数近い45%に上っている。地域別に見ると、東京が109・0%、京都・大阪106・0%、東海103・0%など都市部が定員を超えている一方、東北が96・9%、中国95・8%、四国は88・5%にとどまる。

 地方の大学にとっては東京一極集中を改善する必要があるが、同協議会の提言は「小中学生の農山漁村への短期または長期ホームステイ留学を国の学校教育レベルで制度化する」「地方高校・地方大学へのホームステイ留学を支援する」ことも提案。地方に住む住民の孫世代のU・Iターンを支援し、留学生と後見人(社会的祖父母)、地域住民と若者によって地域を「多世代共生社会」として再生するとしている。

 文部科学省は国立大学に対して「地域貢献」「特色ある研究」「世界水準の教育研究」といった目標を定めるよう求めたが、私立大学も含めて大学の生き残りはもちろん、地方創生の視点から大学の力を積極的に生かしていくことが必要というわけだ。(誠)