「健康家族」を取り戻すために


 心療内科医の星野仁彦氏(福島学院大学教授)が、著書『子どものうつと発達障害』(青春出版社)の中で、「健康家族の三つの条件」という興味深い見解を紹介している。

 星野氏は、多くの子供たちを診療してきた経験から、子供たちの心の病の背景には家族が機能していない「機能不全家族」があるという。そうした機能不全に陥った家族が家族機能を取り戻して「健康家族」になるためには次の三つの条件が大切だというわけである。

 一つは「夫婦連合」=夫婦が強い絆で結ばれていて、それと競合するような関係(父親のマザコンなど)は認めない。そして夫は妻に対して「一生全力を尽くしてあなたをお守りします」という姿勢を貫く。

 二つ目は「世代間境界の確立」=祖父母、父母、子供の世代間で干渉し過ぎたり巻き込まれたりしないようにする。例えば、両親が共働きのため祖父母が育児の実権を握ったり、父親が妻より祖父母の意見を優先するようなことがないようにする。この場合も、父親が母親を守る姿勢を貫く。

 三つ目は「性別役割の明確化(性的モデルの存在)」=夫婦が男女の愛情を基盤に結びついていて、性役割の混同が見られない状態で、将来、子供が成熟した男性・女性になるための性的同一性(アイデンティティー)獲得のモデルになる。これが不十分だと、子供は将来の目標が定まらず、モラトリアムの状態になるという。

 星野氏には以前お話を伺う機会があったが、その際も、大事なのは「母親が笑顔でいられる家庭」を築くことで、そのために最も大切なのが「夫婦関係」だと強調されていた。機能している家族では、父親は帰宅したら母親に「愛しているよ」と語りかけるという。夫婦が精神的に支え合っている家庭では、子供が心のストレスを抱えることはほとんどないとも言われていた。(誠)