不安な女子大の行く末


 今年も母校の女子大から寄付を募る書類が郵送されてきた。女子大は寄付が集まらない。男女共同参画の世の中、女子大が存続し続けるのは容易ではない。米国でも女子大はかつての4分の1。セブンシスターズと呼ばれる米名門女子大も2校が共学化した。それでも女性のリーダーを輩出する名門校として高い地位を保持している。

 その米名門女子大がトランスジェンダーの学生の入学許可をめぐって揺れている。長い議論の末、昨年5月、最大規模を誇るスミス大学、同6月にバーナード・カレッジで、体は男性、心は女性のアイデンティティーを持つトランスジェンダーの学生に入学許可を決めた。心が女性であれば、女性のリーダーシップ育成という女子大の役割と矛盾しないという判断だ。

 心の性別を優先し、門戸を開いたわけだが、心の性は本人の自己申請に任せるしかない。入学後、男性に性転換した場合、学位授与はしないという。しかし、体は男性だが、心は女性と自認する学生が入学後、性自認が変わったら、卒業証書や学位はどうなるのか。

 米国ではトランスジェンダーの差別は許されないと、トイレや更衣室の利用をめぐって激しい論争が起こっている。大学の寮でもしトランスジェンダーの学生と同室になったら部屋を変えたりできるのか。留学中の息子に聞くと「部屋は簡単に変えられるが、変えた場合はかなり風当りが強くなるだろう」とメールが返ってきた。

 女子大は昔からフェミニズム研究が盛ん。国立の某女子大はジェンダー研究の拠点になっている。先日もあるシンポジウムで名門女子大学のトップが、「女子大はジェンダーを先導する役割を担っている」と発言していた。

 いずれ日本の女子大もトランスジェンダー対応を迫られる日が来るのだろう。そう考えると、ますます母校の行く末に不安が募るばかりだ。(光)