給付型奨学金、納税者の理解得られる制度を


 大学生らを対象とする国の奨学金制度の充実策が検討されている。

 文部科学省のプロジェクトチーム(PT)は、返済不要の給付型奨学金の在り方などについて、政府が5月にまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」に具体策を盛り込む方針だ。

 返済が滞るケースも

 安倍晋三首相は先月末、今年度予算の成立を受けて「本当に厳しい状況にある子供たちには、返還が要らなくなる給付型の支援によって、しっかり手を差し伸べる」と述べ、給付型奨学金を創設する考えを表明した。自民党の教育再生実行本部と公明党の教育改革推進本部も、安倍首相への提言に給付型奨学金を盛り込んでいる。

 大学の授業料は現在、平均すると私立で約86万円、国立で約54万円かかる。一方、国の奨学金制度は有利子と無利子の「貸与型」しかないため、金銭的な問題で進学を諦めざるを得ない若者がいる。

 国の奨学金を利用する学生数は、1998年度の約38万人から2015年度には3・5倍の約134万人に増えた。だが、卒業後に安定した職に就けずに返済が滞る問題が生じている。14年度末時点の未返済者は約33万人、滞納額は約900億円に上る。

 学生が将来への不安を抱くことなく、勉学に専念できるように経済的支援の拡大が求められるのは当然だ。ただ、奨学金制度を充実させるには財源をはじめ課題が多い。

 特に給付型奨学金に関しては、大学に進学しない若者もいる中、税負担の公平性の観点から対象をどのように選定するかが問われる。PTでは、対象を生活保護世帯に限るか、住民税非課税世帯などを含めるかについても議論されている。

 政府・与党が給付型奨学金の創設を打ち出したのは、今夏の参院選から選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられるため、若者支援拡充をアピールする狙いがあるようだ。しかし、野放図に支援を膨らませるようなことがあってはならないのは当然で、納税者の理解を得られるような制度とすべきだ。

 奨学金については、17年度から卒業後の所得に応じて返済額が変わる「所得連動返還奨学金」が導入される。現在は、年収300万円以下の人が最長10年間返済を猶予される以外は原則定額返済で、低所得者ほど負担が重いのが課題だ。

 新制度では月額2000円を最低返済額とし、マイナンバーを基に住民税の課税所得の9%を返済額とすることで負担軽減を図る。

 このほか、無利子奨学金の拡充なども進める必要がある。首都圏では地方出身者らを対象に給付型奨学金を設ける私大もあるが、こうした取り組みも有効だろう。

 学生は明確な目標を

 ただ給付型は別として、奨学金が「借金」であることは確かだ。借金をしてでも大学に行く以上、それだけの明確な目標と勉学への熱意が学生にも求められよう。

 何のために大学で学ぶのか、この機会に学生には改めて考えてほしい。