介護を誰が担う


 高齢者への虐待相談が増えている。先週、厚生労働省が公表した調査では、家庭で介護者による高齢者虐待の相談件数は2万6千件。虐待の半数近くは虐待を行った介護者と被虐待高齢者が同居する2人暮らしで、虐待者の4割が被虐待高齢者の息子という。

 親がわが子を虐待し、子が老親を虐待する。虐待という意味では事情は似ている。狭い密室空間で一人で問題を抱え、心身ともに追い詰められ虐待に至る。児童虐待では6割以上が親が加害者となり、高齢者では息子が虐待者となる。周囲に相談できる家族・親族や親しい人がいない。経済的余裕がないという点も共通している。

 近所の知人に40代で未亡人になった方がいる。子供がいないこともあり、義父と実母、そして夫と、3人の介護を経験された気丈な方だ。結婚生活の大半を介護に追われ、ちゃんとした仕事に就く余裕もなかったという。「一人でよく越えて来られましたね」と言うと、3人の介護が重なる危機に陥った時、近所の福祉の専門家との出会いが窮地を救ってくれたという。

 今も彼女の介護生活は続いている。一人暮らしの父の家と施設に入所する義母の所を往来する日々。頭が下がる。

 彼女のような専業主婦は珍しい。共働きが標準となったいま、子育てと介護を誰が担うか。実に大きな問題だ。しかも晩婚・晩産化が進み、子育てと介護が重なる場合も起こりうる。

 子育てや介護という人のケアは本来家族が担う重要な役割である。だから子は老親を看たいと思うし、自分が要介護になったらできたら施設に入りたくはない。これまで家族のケアは主に女性が担ってきた。政府は「10万人の介護離職ゼロ」を打ち出すも、保育士同様に人材確保は簡単ではない。

 家族あるいは誰かが担うとしても、介護者が待遇面でももっと優遇されなければならない。(光)