恐怖を克服して自立


 先日、戸塚ヨットスクールの創立37周年パーティーに出席する機会を得た。戸塚宏氏は75年、沖縄国際海洋博での太平洋横断レースに参加、記録的タイムで優勝し、翌年戸塚ヨットスクールを開校した。

 優秀なヨット選手の育成を目指して始めたが、ヨットスクールでの訓練が不登校や自閉症の子供たちに効果があると評判になり、多くの子供たちが入校、成果を出してきた。

 しかし、訓練生の死亡事故が起きるや否や、それまでの評価する報道ぶりから、マスコミの論調がヨットスクール叩(たた)きに一変した。

 戸塚校長は、パーティーの席で、幼少期から問題を抱えるようになった教育環境について全く問題にせず、事故が起きたことでヨットスクールにすべての責任を負わせるようなマスコミ報道を批判した。

 また、人間を成長させるのは理性よりも本能だ、と力説。

 体罰は否定する一方で、増加する子供たちの不登校など、精神的に病んでいる状況を一向に解決できない文部科学省の政策に疑問を表明した。

 その上で、戸塚校長は「怖さを克服してこそ自立する」と強調。ヨットを操縦する中で、厳しい自然と格闘し、それを克服する意味を述べた。

 たまたまテーブルで隣に居合わせたヨットスクールの卒業生にスクール時代の感想を聞いたところ、「校長は本当に怖かった」との弁。怖さには校長のことも含まれていることが分かった。

 加えて、ヨットの練習についても、「冬の海は本当に冷たかった」と、その大変さが伝わってきたが、「今では懐かしい時代だったと思える」と述べていた。

 大変な時を死にもの狂いで通過することで、その苦労が懐かしく、また、その厳しさの背後に愛情があったということを思えるようになるのだろう。(山)