NHKEテレが元旦の朝、放映した新春能「高砂」…


 NHKEテレが元旦の朝、放映した新春能「高砂」を観た。結婚式でよく謡われる<高砂やこの浦舟に帆を上げて>の詞で有名である。

 石川県金沢は「空から謡が降ってくる」と言われるくらい、能楽の盛んな土地。金沢の知人の結婚式に出て、地元の若い男性が「高砂や」を朗々と謡うのを聞いて、感心させられたことがある。

 落語の「高砂や」は、長屋住まいの八五郎が、ひょんなことで婚礼の仲人役を仰せつかり、婚礼の席で「高砂や」の後の詞が出てこず四苦八苦する噺(はなし)。気流子もテレビではあるが、今回初めて謡曲「高砂」をじっくりと鑑賞し目を開かされた。

 阿蘇神社の神主友成が上京の途次、高砂の松の下で松葉掻きをしている老夫婦に出会う。友成が高砂の松と住吉の松を相生の松とするいわれなどを尋ねると、尉(じょう)と姥(うば)は、自分たちが松の精であることを語り小舟に乗って沖へ去って行く。

 この尉と姥が夫婦円満、長寿を象徴するところから、結婚式で謡われるわけだが、それだけではない。<四海波静かにて国も治まる時つ風><君の恵みぞありがたき>と天下泰平を言祝ぎ皇恩に感謝する。

 今日的なテーマでは、尉と姥が松掻きをするのは、老松の樹陰を清めるだけでなく、集めた松葉を竈で焚き燃料にするためで、松林と人間との共生を象徴すると民俗学者・野本寛一氏は言う。神韻渺茫(びょうぼう)としたこの能は、かくも豊かなメッセージ性を孕(はら)んでいるのだ。