「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京)…


 「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京)という番組がある。路線バスを乗り継いで、3泊4日の日程で目的地へ向かう。第16回(1月4日放送)は、千葉県の館山市から、福島県の会津若松市まで行く。

 バスといっても高速バスは禁止。鉄道、タクシーはダメだが、徒歩はOK。厳しいルールを出演者に課して、彼らの反応を笑いにするテレビ番組が最近多くなったが、そうした番組が単なる娯楽に終わっているのに対して、この旅番組からは、見逃せない日本の現実が伝わってくる。

 3人の出演者は、バスが一日に数本しか運行されていないことに愕然とする。余計な演出はなく、出演者の困惑にわざとらしさは全くない。

 「その路線はまだありますよ」と教えられても、実際は半年前に廃止になっていることもある。そのように話した地元の人も、ウソを言ったわけではなく、知る限りの事実を伝えただけだ。

 一部の大都市を除いて、路線バスはどんどん減っている。日本社会の大きな変容が出演者たちの苦労や疲労を通して伝わってくる。そう言えば、彼らの乗っているバスもおおむね席が空いている。

 「この路線もいずれはなくなるのか……」との予感もしてくる。バス路線の相次ぐ廃止を問題にしようなどという意図で番組が作られたわけではないだろう。だが、面白くてつい見てしまうこの番組が示しているのは、急激に変化する日本の現状だ。