外務省が表記する外国の国名から「ヴ」を…


 外務省が表記する外国の国名から「ヴ」をなくすための法律が、国会で全会一致で可決、成立した。なじみの薄い「ヴ」の使用をやめるのが目的だった。

 外務省の話だから、それ以外で「ヴ」を使うのは一向に構わないのだが、最近は「ヴ」と表記するケースが少なくなってきたことは確かだ。

 かつては「ヴァイオリン」が一般的だったが、今はバイオリン。わざわざヴァイオリンとされていたのは、あらゆる歴史的現象と同様、一定の意味があったためだろう。「バイオリンでは味気ない」と考えられていたとも言えるし、「ヴァ」の方が原語の発音に近いと感じられたのかもしれない。「ヴ」という表記には、戦後の啓蒙(けいもう)主義・教養主義の名残が感じ取れる。

 「ウ」に濁点を付けるのは少々苦しいが、それでもかつてはそれがふさわしいとされた。しかし時代の流れの中、「分かりにくい」と感じる人が多くなったのだろう。「ヴ」への違和感が国会議員の間にも浸透したようだ。

 そういえば、レーガン元米大統領は当初「リーガン」と表記されていた。それが突然レーガンに変わったのを不思議な印象と共に記憶している。レーガンの方が、実際の発音に近いとされたのか。

 外国人の人名表記は、日本人のそれとは違った複雑さがある。現在の米国務長官はテレビの場合、民放は「ポンペオ」、NHKは「ポンペイオ」と発音する。米国大使館がどのように考えているかは分からない。