福島県の伊達地方は昔から養蚕の盛んな所だ…


 福島県の伊達地方は昔から養蚕の盛んな所だ。伊達郡川俣町に機織神社があり、中央公園には祭神の小手子の像が立っている。小手子を妃としていた崇峻天皇は、蘇我馬子の専断で帝位を失い、小手子は皇子を追ってこの地に来たという。

 ここで人々に養蚕と機織りを教え、養蚕業が始まっていく。そんな歴史を背景に地元の織物メーカー齋栄織物が開発したのが、世界一薄い絹織物「フェアリー・フェザー」。

 「妖精の羽」という意味で、量産化を実現させたことで2012年に「ものづくり日本大賞」の「内閣総理大臣賞」と「グッドデザイン賞」を受賞。ヴィトン、アルマーニ、エルメスなど世界のブランドが採用している。

 糸の太さは髪の毛の6分の1という極細で、まったく重さを感じさせない。繭はふつう蚕が4回脱皮して作ったものを使うが、これは3回しか脱皮していない小さな繭を使っている。

 今回、文化審議会(佐藤信会長)は「伊達の蚕種製造及び養蚕・製糸関連用具」(同県伊達市)を重要有形民俗文化財に指定するよう柴山昌彦文部科学相に答申。近く告示される。

 養蚕の道具は時代と共に変わってきたが、伊達地方では江戸時代から蚕種業を頂点に裾野を広げ、家々で蚕を育てて糸を紡いできた。残されている道具の種類の豊富さと数の多さは日本有数。伊達市では3000点に及ぶその整理作業を進めてきた。それらはフェアリー・フェザーの歴史の重さを教えてくれる。