世界日報 Web版

やや暖冬と言われる今年でも、冬は冬である…


 やや暖冬と言われる今年でも、冬は冬である。老身にはこたえる寒の間、外の風の冷たさに身を縮ませて過ごすうちに、はや2月も昨日は立春。「一月往(い)ぬる、二月逃げる、三月去る」と韻を踏んで言い表す、時の流れの速さに改めて驚く。

 東京は昨日、暦通りに一気に春らんまんの陽気となったが、しばらくは冴(さ)え返(かえ)りの日も。きょうは旧暦の1月1日で、中国などでは年の始まりである春節(旧正月)を祝うが、やらねばならぬことに追われる人には“往ぬ”の実感だけが重くのしかかってこよう。

 ツルゲーネフは『父と子』の中で<時のすぎるのが早いか遅いか、それに気づくこともないような時期に、人はとりわけて幸福なのである>と書いているが、そんな心持ちをいつになれば味わえるのだろうか。

 2月は「梅つ月」とか「梅見月」ともいう。まだ寒さが居残り花色の乏しいこの季節に、万花に先駆けて凛(りん)然とした咲き姿を見せ、豊かな香気を放つ梅。そこに、何か励まされる感じを持つ人も少なくなかろう。

 学問の神様とされる菅原道真を祭る湯島天神(東京・文京区)にはこの時期、春を祈る受験生の絵馬がどっと増える。20種約300本の梅はこのシーズンに合わせるように咲き始め、訪れる受験生たちをすがすがしい気持ちにさせて励ましてくれる。

 禅宗では、梅を人生の山や谷をくぐり抜けて悟りを開いた人の生き方に重ねてきたという。<冬の梅あたり払(はらい)て咲きにけり>小林一茶。