世界日報 Web版

梅だよりは立春のころから聞かれるのだが…


 梅だよりは立春のころから聞かれるのだが、今年は暖冬で、茨城・水戸市の偕楽園では今週に入り、白難波や八重寒紅など、早咲きの花が70本以上開花したという。静岡県の熱海梅園では1月5日から梅まつりが始まっている。

 熱海は冬も暖かく、早くも11月下旬から12月上旬に開花。早咲き、中咲き、遅咲きと3月3日までまつり期間だ。梅林はそぞろ歩きが楽しい。寒風の中で気品ある香りに出会うと、これこそ日本と思う。

 梅林の野点(のだて)では落語会や演芸会が行われるが、この風景によく合うのは筝(そう)の演奏だ。あちこちの梅林で筝の曲を聴いてきた。古典では八橋検校の「六段」、新しい曲では宮城道雄の「春の海」が代表的。

 「六段」の作曲者は、八橋のほかに諸田賢順や北島検校という説もある。福岡・大牟田市の筝曲家だった故坪井光枝さんは2006年、「六段」の原曲はグレゴリオ聖歌「クレド」ではないかと気付き、音楽学者の皆川達夫さんに連絡。

 09年、皆川さんは「六段」と「クレド」の比較楽譜を作製して「両者の構成があまりにも整然と合致する事実に愕然としました」と『キリシタン音楽入門』(日本キリスト教団出版局)に記している。

 その後、検証を経て、皆川さんは坪井さんの説を11年、日本音楽学会で発表。賢順はキリスト教の禁教(1614年)以前の人だ。「クレド」の旋律は幕府に気付かれないよう希薄化されたらしいが、その演奏史は驚嘆の歴史だ。