「冬ぬくし老の心も華やぎて」(高浜虚子)…


 「冬ぬくし老の心も華やぎて」(高浜虚子)。このところ朝夕が一段と冷え込むようになってきた。そろそろ暖房器具が欲しいところだが、日中は暖かい日が多く、じっとしていると自然に汗ばんだりする。これが、季語の「冬暖(ふゆあたたか)」が意味する状態なのだろう。

 11月を冬というのはためらわれるが、歳時記では冬だ。現代の感覚と歳時記とのずれには少しばかり戸惑ってしまう。それだけ旧暦と新暦の違いが大きいのである。ただ、日頃はそれほど旧暦を意識することはないので、日常生活で困ることはない。

 稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』には「冬になっても暖かい日があり、数日またはやや久しく続くこともある。それをいう。寒さが当然と思っているときだけにその暖かさにはことに感じがある」とある。何とも微妙な表現という感じがする。

 冬の寒さをしのぐため、毛が生え変わる動物もいる。一方、現代人は、夏はクーラー、冬には暖房という生活に慣れ切っている。昔の人に比べ、自然と接する機会も少なくなっている。

 それでも寒暖の差が激しい時、特に高齢者はその差についていけなくなってしまうことがある。その意味で、冒頭の虚子の俳句は実感がこもっている。

 高齢で体温調節が難しくなっているので、冬の暖かさが身に染みるほどうれしいということだろう。高齢者の一人である気流子も、その気持ちがよく分かる。このような天候の時は風邪を引きやすいので気を付けたい。