「チェロを弾くすさびのありて秋深し」…


 「チェロを弾くすさびのありて秋深し」(中口飛朗子)。秋には、さまざまな色彩がある。空気が澄んで空の青が映え、紅葉が深まれば赤や黄色が鮮やかだ。

 秋は五穀豊穣(ほうじょう)で食欲を刺激される季節。一方、芸術の秋と言われるように、絵画や音楽の鑑賞、読書などにもふさわしい時期である。10月27日から11月9日までは読書週間で、今年の標語は「ホッと一息 本と一息」。

 毎年恒例のものだが、やはりこの時期になると何を読もうか考える人もいるだろう。「これを読め」という読書の勧めもある。とはいえ、あまり読書をしてこなかった人に読書週間だからといって、いきなり古典や名作などに挑戦するよう勧めるのはどうかと思う。

 確かに読めばさまざま学ぶことがあって知的な刺激を受けるが、どうしても言葉の使い方や表現が古いのでとっつきにくい面がある。やはりある程度の読書経験を積み、その上でワンランク上のものに挑戦するというのがいいのではないか。

 また、人から強く勧められると、かえって逆効果になる場合もありそうだ。現在はスマートフォンなどの端末で電子書籍が手軽に読めるようになり、紙の本しかなかった時代とは環境も異なっている。

 「紙の本はやがて無くなる」と指摘されたこともあるが、現在では電子書籍との棲(す)み分けが進みつつある。ただ紙であれ電子であれ、本を読むことで精神的に得られるものが少なくないことだけは間違いない。