コンサートのドタキャン騒動を起こした歌手…


 コンサートのドタキャン騒動を起こした歌手の沢田研二さん。70歳になる沢田さんの今回の行動は、当代全く自明なことと受け止められている「顧客本位」に真っ向から挑戦するものだった。

 さいたまスーパーアリーナで開催予定だったコンサートは「9000人と聞いていたが、実際は7000人。席がスカスカの状態でやるのは酷なこと。僕にも意地がある」と独断で中止を決めた。

 かつて「お客様は神様」と言った国民的歌手がいた。その趣旨は、神でも何でもない聴衆を「神に見立てて歌う」というものだった。

 それが、いつしか昨今の消費社会と結び付いて「客である自分は神」と思い込む人が急増して今日に至っているのは周知のことだ。「客(消費者)は神」と錯覚した人が多数を占める時代に、独特の理由でドタキャンした沢田さんは、時代の流れに逆らう形となった。

 沢田さんは、全てを丸く収めようとする芸能界と闘ってきたと述べている。「厄介な人間」との自覚もあった。「流される」ことを当然視する人間も多い芸能界にあって、あえてそれを拒んできた。今回の騒動も、こうした姿勢の表れと言える。

 ドタキャンは、責任の取り方も含めて本人が決めたこと。半面、沢田さんと同等の大物芸能人であっても、このような騒動を起こすとは限らない。そこはそれぞれ、芸能人としての在り方の問題だから、誰もが沢田流を貫かなければならないものでもない。