アジアは発展し変容しつつあるが、変化は…


 アジアは発展し変容しつつあるが、変化は社会だけでなく家族や女性の価値観にまで及んでいる。それを紹介しているのが、東京都写真美術館で開催中の「愛について アジアン・コンテンポラリー」展だ。

 中国、シンガポール、台湾、韓国、在日コリアン、日本の女性アーティストらの写真約80点で構成。作品からは彼女たちの置かれている社会的背景が浮かび上がってくる。

 韓国の済州島は同国内唯一の特別自治区で、2008年に無査証対象国・地域を180カ国・地域に拡大。規制緩和や制度改革で観光客や投資が増大した。金玉善(キムオクソン)さんの〈ハッピー・トゥゲザー〉は、ここに住む国際結婚したカップルがテーマだ。

 異文化との葛藤と調和、その緊張関係を視覚化している。このテーマは作者自身の生活に由来するもので、彼女はドイツ人男性と結婚して長年過ごしたソウルを離れ、現在は済州島で暮らしながら制作している。

 中国のチェン・ズさんは自傷行為をテーマにしたセルフポートレート〈我慢できる〉で注目された作家。1989年北京生まれで、米国に留学してその体験を表現する手法を手にした。

 リストカットする痛ましい写真が展示されていたが、この展覧会を企画した笠原美智子さんは、それを「死から遠ざかる、自分自身を生かす行為」と解説する。チェンさんに尋ねると「痛快」と書いた。「痛い」のが「快感」。中国社会のもたらす内的重圧を想像させた。