「池上の方針で、番組では八幡さんの意見…


 「池上の方針で、番組では八幡さんの意見ではなく池上の意見として紹介しますが、ご了解いただけるでしょうか」とテレビ局の担当者から言われたと、八幡和郎(やわたかずお)氏(評論家)が書いている(「月刊Hanada」11月号)。

 「あまりに非常識なので断った」と八幡氏は記している。池内恵(さとし)氏(イスラム学者)は「あなたの本に書かれていることは、池上さんの本に載っているのと同じ」と読者に言われた。本当は池内氏がオリジナルで、池上彰氏(ジャーナリスト)の無断引用だった。

 証言の通りとすれば、池上氏に関わる不審な話だ。が、なぜか、この件が話題にならない。それも不審だ。

 しかし、本当は不思議でも何でもない。テレビの問題だからテレビは報道しない。テレビと関係の深い大新聞も伝えない。最近の週刊誌はテレビと連携していることが多く、池上氏自身「週刊文春」に長期連載を続けている。メディアの防壁が極めて固い以上、残るは月刊誌かインターネットということになる。

 池上氏が蓄積した知識は膨大だから、発言に当たって出所をいちいち明かす必要はない。だが、わざわざ取材した相手の名前を敢(あ)えて外すこともない。

 「八幡見解」は「被害者」としての言い分に留(とど)まるが、それでも奇妙なことが行われている可能性はある。大多数が「池上氏の方針」を受け入れているのだろうが、稀(まれ)に今回のように異を唱える人物が登場することがある。池上氏側の対応が問われる。