「割箸を徐々に焦がして秋刀魚焼く」(堀花江)…


 「割箸を徐々に焦がして秋刀魚焼く」(堀花江)。秋の味覚というとサンマ(秋刀魚)を思い出すのは昔の話で、最近は不漁で価格が高騰し、庶民の味ではなくなった。背景には、地球温暖化による海流の変化や、中国や台湾の漁船による乱獲などの影響があると言われている。

 自然の変化や人為的な理由で、季節を代表する味覚も変わらざるを得ないということか。ただ、今年は昨年よりも漁獲量が若干増えているようだ。俳句では、サンマは秋を代表する季語の一つ。

 稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では「秋刀魚の群れは秋風とともに北海道あたりから南下し、秋の深まるにつれて房総沖から紀州沖にまでおよんで捕れる。刀のように細長く、背が青く、腹は銀白色。焼いて、大根おろしを添えて食べるともっともうまい。季節の魚として食卓を賑わす」とある。

 こうした記述も、今後は変えていかなければならないのかもしれない。季語も、それが作られた時代(例えば江戸時代やその後)から時間が経過し、その風俗や意味などが分からなくなっているものも多い。

 時代が動けば、言葉も変わるものと変わらないものに分かれていく。かつて、俳聖と呼ばれた芭蕉は「不易流行」を説き、このことを指摘している。

 秋の季語の魚は、サンマのほかにも「秋鯖(さば)」「太刀魚(たちうお)」「鰯(いわし)」「鮭(さけ)」「鱸(すずき)」「鯊(はぜ)」などがある。秋は海の魚も豊富なのである。日本の自然の豊かさ、食べ物にちなむ伝統文化を大切にしたい。