「実際に迫る水を見るまで重い腰が上がら…


 「実際に迫る水を見るまで重い腰が上がらなかった」。西日本豪雨で避難が遅れ、辛くも一命を取り留めた岡山県倉敷市真備町の竹内昇さん(70)。近接の堤防が決壊し、道路の両側から水が押し寄せてきて、初めて「まさかの事態」に気付いたという。

 この間、直ちに命を守る行動を取るよう促す気象庁の特別警報、市町村が発令する避難勧告、避難指示が出ていた。竹内さんは避難のタイミングの難しさをつくづく思い知らされた。

 今回の災害ではこのタイミングを失い、犠牲になった人が少なくない。これについて、東大の片田敏孝特任教授(災害社会工学)は「災害時には一人ひとりが当事者意識を持って行動を取る必要がある。高齢者など個人での対応が難しい人は、地域で支える仕組みを議論すべきだ」と話す。

 しかし現状では、自宅周辺の降雨量や近所の山の斜面の状況が危険であるかを住民が判断するには、リアルタイムで入手できるデータがかなり不足している。

 平成25年版防災白書で防災国家の要諦として「国土強靭化推進」が挙げられ、被害をできる限り軽減し、その拡大を防止することや、迅速な復旧・復興を可能にすることなどに力点が置かれた。以後、建造物の耐震化やハザードマップ作成などが進められている。

 これに対し、緊急時の危険情報の共有や避難の在り方など住民の自助、共助を可能にするソフト面の充実は案外難しい。その必要性が今回、はっきりした。