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幕末から明治にかけて日本に滞在した英国人…


 幕末から明治にかけて日本に滞在した英国人外交官アーネスト・サトウの回想録『一外交官の見た明治維新』(坂田精一訳)は、維新史を語る上で欠かせない一冊。西郷隆盛や井上馨らとも親しく交わったサトウの回想は、政治外交の機微をうかがわせ興味尽きない。

 同書は当時の社会・風俗資料としても貴重だ。将軍・徳川慶喜が大坂城で各国公使を引見する行事に参加した後、サトウらが東海道を江戸へ下る話が載っている。

 その中で「実に日本人は大の旅行好きである」「本屋の店頭には、宿屋、街道、道のり、渡船場、寺院、産物、そのほか旅行者の必要な事柄を細かに書いた旅行案内の印刷物がたくさん置いてある」と紹介。

 近江・草津では、宿の女が沐浴するサトウに「背中を流しましょうか」と申し出る。英国にはそういう習慣はないということで断るが、こんな宿場での「おもてなし」の様子も面白い。

 江戸時代はお伊勢参りなど国内旅行が盛んになった。17~18世紀の英国では、貴族の子弟が欧州各国を巡るグランドツアーが行われた。しかし国内旅行に限れば、一般庶民までが旅を楽しんだ日本が世界の最先端だった。

 その中で育まれてきた「おもてなし」の伝統が、海外からの旅行者の増加、インバウンドを後押ししてきた。英国にはB&B(ベッド&ブレックファスト)、日本には民宿がある。そこに昨日解禁された民泊が加わるが、日本の旅行文化の一翼をどう担うか今後の課題だ。