75歳以上のドライバーの認知症対策が強化…


 75歳以上のドライバーの認知症対策が強化された改正道路交通法の施行から約1年。この間、全国で約210万人が検査を受け、約5万7000人が「認知症の恐れ」と判定された。さらに医師の診断を受け免許取り消しとなったのは1836人だった。

 一方警察庁によると、昨年1年間の75歳以上の免許の自主返納は25万3937人で前年比9万人の増加。増えているのは、バスやタクシーの割引などの支援が受けられる制度もあるが、やはり高齢ドライバーによる深刻な事故が相次いでいることが大きいだろう。

 先月も神奈川県茅ケ崎市で90歳の女が運転する車が赤信号の交差点に突っ込み4人が死傷する事故が起きた。女は「信号が赤に変わったことは分かったが、歩行者が渡り始めていなかったので行けると思った」と供述している。

 運転歴は50年以上でゴールド免許を持っており、今年3月の免許更新のための検査で「問題なし」と判定されたばかりだった。自分の経験を過信したのだろう。

 今年の新宿末広亭の正月二之席に出演した落語家で人間国宝の柳家小三治師匠が、まくらで普通免許と大型自動二輪の免許証を自主返納したことを明かしたことは、本欄でも紹介した。バイクを趣味としていた小三治師、特に自動二輪免許には特別な思いがあったという。

 自主返納したドライバーの中には、車が生活に欠かせない人もいたかもしれない。勇気ある決断には敬意を表したい。