全くの無防備状態で後ろから強烈なタックル…


 全くの無防備状態で後ろから強烈なタックルを受けのけぞる選手。テレビで流された映像を見て「これはひどい」と思わない人はいないだろう。アメリカンフットボールの日本大-関西学院大の定期戦で行われた悪質反則行為は、スポーツマンシップの真逆にある行為、二度と見たくないシーンである。

 その危険な行為を行った日大の宮川泰介選手が記者会見で、内田正人監督(当時)と井上奨コーチの指示だったことを明らかにした。3日前から練習を外され、「相手のQB(クオーターバック)を1プレー目でつぶせば出してやる」という内田監督の考えを井上コーチから伝えられたという。

 その通りだったとすれば、部下の弱みに付け込んで違法行為に手を染めさせる犯罪組織のやり方と変わらない。反則行為をさせるため、わざと宮川選手を練習から外していたとすれば、計画的でさらに悪質だ。

 監督から指示があったのかとの記者たちの質問に、内田監督は「文書で回答する」と、およそスポーツマンらしくない姿勢に終始している。記者会見を開いて説明すべきだろう。

 大学当局の猛省は当然として、丸腰の相手に後ろから切り付けるような、非武士道的で恥ずかしい行為が、なぜ行われたのか。原因を明らかにする必要がある。

 ただ宮川選手は「監督とコーチからプレッシャーがあったにしろ、プレーに及ぶ前に、自分で正常な判断をすべきだった」と心から反省している点が、せめてもの救いだ。