東日本大震災の発生した2011年3月11日の…


 東日本大震災の発生した2011年3月11日の午後2時46分頃、気流子は日比谷交差点で信号待ちをしていた。突然ぐらりと大きな横揺れが来て、目を上げると交差点の向こうの30階建てのビルの上部が揺れているのが見えた。とうとう東京に大地震が来たか、と思った。

 政府の中央防災会議が、首都直下地震の被害想定を発表した。今後30年以内に70%の確率で発生するというマグニチュード7級の直下地震では、最悪のケースで2万3000人が死亡し、経済被害額は95兆円に及ぶ。

 首都直下地震は、国の中枢部分への直撃を意味する。人間で言えば、脳に当たる。脳の機能がマヒすれば、体全体の危機となる。

 政府は、その中枢機能を担う中央官庁の代替拠点づくりを進めてきた。しかし、その多くは都内にあり、大丈夫かという気がする。

 首相官邸が損壊したり、使用できなくなったりすることも考えられる。官邸機能のマヒだけは避けなければならない。しかし、その移転先の候補地もまだ絞られていない。緊急事態に対処する法の整備が必要だろう。

 それにしても東日本大震災を経験し、甚大な被害が想定されているにもかかわらず、首都機能移転をめぐる論議が一向に高まらないのはどうしたことか。大震災の後、「想定外を想定する」などと論理矛盾の言葉が盛んに使われた。今すべきは、まず想定内のことに、しっかりとした対策を講じることである。