桂信子賞は女性俳人の活躍に対して贈られる…


 桂信子賞は女性俳人の活躍に対して贈られる賞で、今年1月に授与されたのは恩田侑布子さん。桂の関係資料を収蔵する兵庫県伊丹市の柿衞文庫で授賞式と記念講演会が開かれた。

 この時の講演を聴いた「藍生」主宰で同賞選考委員の黒田杏子(ももこ)さんは、恩田さんの言葉の才能と美貌に感動し、「聴いた人が少なく、もったいない」と、東京での講演会を準備した。

 「花と富士 日本の美と時間のパラドクス」と題して、その講演会が文京区の文京シビックセンターで「藍生」の主催で開かれた。発端は、2013年に恩田さんが評論集『余白の祭』で第23回ドゥマゴ文学賞を受賞したことだった。

 翌年にフランスでの講演の機会が与えられ、3都市で開催。「フランス人は俳句をよく知っているので、初心者向けではなく、突っ込んで専門的に話してほしい」という要望が伝えられた。

 それに応えるように、恩田さんは俳句と東洋芸術の伝達者として自らを表現したのだった。フランス人に対するのと同じ趣旨で語ったのが今度の講演会。自作の朗読はフランス語と日本語とで行った。

 恩田さんは静岡市葵区吉津に暮らしていて、四季を通して見ているのが富士山だ。この日本一の山とサクラを題材に、儚(はかな)いものに永遠を見る日本人の特異な時間感覚や、余白について語った。「東洋の精神がフランスでは待たれていたのです」という。世界から関心を持たれている日本の美学である。