全国各地の観光名所、史蹟(しせき)のうち…


 全国各地の観光名所、史蹟(しせき)のうち、経年劣化や自然災害で傷み、修復が必要な所は少なくない。毎年190万人の来場者がある名古屋城も同じ事情を抱えている。

 そのため昨秋、名古屋市の河村たかし市長は「天守が地震で相当危ない。早急に入場を禁止することになる」と発言。戦災によって焼失した天守閣の木造復元を主張し、市民を巻き込む論争となった。

 結局、今年の市長選で河村市長が勝利。2022年12月完成予定の「木造新天守」は、観光客誘致の起爆剤になると期待され、天守台石垣の安定性を評価するための調査作業が進んでいた。ところが、ここにきて突然ストップした。

 名古屋市の有識者会議で、天守閣部会の座長が「(石垣部会は)安全性を考えていない」と発言。会議が紛糾し、石垣部会から調査に関する助言を得られなくなったためだ。名古屋市は来年1月には調査を再開したいとしているが、すったもんだが続いている。

 一事が万事。史蹟などの修復事業は、伝統的な価値の保持と予算との折り合い、安全性確保などの問題が絡み、自治体が手掛ける難事業の一つになりつつある。

 滋賀県彦根市では、国宝・彦根城の多聞櫓北面の壁が今秋の台風で幅約16・6㍍、高さ約3・2㍍にわたり剥がれ落ちた。高い石垣の上に築かれているため、応急処置もできず、このままの状態で年を越すことになるという。市は国庫補助を受けたいとしているが、修復の道のりは容易でない。