中国の史書「魏書」の東夷伝倭人条いわゆる…


 中国の史書「魏書」の東夷伝倭人条いわゆる「魏志倭人伝」には、邪馬台国の女王・卑弥呼には夫がおらず、弟がいて統治を補佐していたと書かれている。姉が祭祀(さいし)を司(つかさど)り弟が政治を担当するという共治体制で、歴史学や民俗学では「ヒメ・ヒコ制」と呼ぶ。

 日本の古代においては姉妹は兄弟を守護する霊力を持つと信じられたのだ。ヒメ・ヒコ制は今も、京都の賀茂神社の斎祝子(いつきのはふりこ)とその兄弟の神官による祭祀体制などに生きていると言われる。

 江戸時代から「深川の八幡さま」として親しまれている東京・江東区の富岡八幡宮で、宮司の富岡長子さんら3人が死亡する事件が起きた。弟の茂永容疑者は長子さんを刃物で刺し、その後自分の妻を殺して自殺した。

 富岡八幡宮は江戸最大の八幡宮で、8月に行われる「深川八幡祭り」は江戸三大祭りの一つ。江戸勧進相撲発祥の神社でもあり、境内には大相撲ゆかりの石碑が多数建立されている。そんな由緒ある神社で起きた事件だけに衝撃は大きい。

 茂永容疑者は、かつて宮司を務めていたが2001年に解任された。長子さんは、宮司の地位をめぐる親族間のトラブルがあると警視庁に相談していたという。

 宮司職をめぐる骨肉の争いが最悪の結果となってしまった。あまりにも影響は大きい。ヒメ・ヒコ制ではないが、日本の良いものが崩れていかないか心配だ。氏子が中心となってこの由緒ある神社を立て直してもらいたい。