国土の約7割を森林で覆われる日本。この…


 国土の約7割を森林で覆われる日本。この割合は、先進国ではフィンランド、スウェーデンに次ぎ3番目という。その森林の荒廃が叫ばれて久しいが、政府・与党はようやく「森林環境税」の導入に本腰を入れ出した。

 森林は木材の供給だけでなく、二酸化炭素の吸収や治水などの役割を果たしている。「森林環境税」と命名される所以だろう。

 戦後の経済復興期、建築材として杉など針葉樹が盛んに植林された。ところが海外から安価な輸入材が入ってきたため、国産材の需要が減り森林は放置されてしまった。林業再生に向けた国産材利用の掛け声もいま一つ盛り上がらない。

 森林と林業の再生には、人材の育成が不可欠だ。説明会を開き、若者を林業へ誘う取り組みも続いている。楽ではないが、自然の中での仕事に魅力を感じる若者も少なくない。

 日本では有史以来の伐採で江戸時代から明治にかけては禿山だらけだったことは意外と知られていない。歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」を見ても、山に樹木がまばらにしか生えていないのが分かる。江戸幕府の厳しい伐採規制や積極的な植林事業で、緑は回復に向かった。

 明治政府も植林に力を入れたが、「森林環境税」が導入されれば、日本の森林史の大きな転換点となるのではないか。国民の負担は1人当たり年間500~1000円ほどを想定しているという。それだけの負担で日本の森林と林業が復活すれば安いものではないか。