「危険運転致死傷罪で起訴されて良かったです…


 「危険運転致死傷罪で起訴されて良かったです。悪いことをしたのに、なぜ軽い罪になってしまうのか、重い罪で処罰してもらいたいとずっと思っていました」。事故で両親を失った小学6年の次女が弁護士を通じて出したコメントが何ともいじらしい。

 神奈川県の東名高速道路で6月、乗用車に追い越し車線で進行を塞がれて停止したワゴン車が大型トラックに追突され、2人の娘の目の前で夫婦が死亡した事故に身につまされた人も少なくなかろう。

 あおり運転や強引な前方割り込みなどの悪質運転を受け、ひやりとした経験をたいていの人が1度や2度はしているだろうから。乗用車の男は前方割り込みと減速を執拗(しつよう)に繰り返し、ワゴン車を止めさせて追突事故を誘発した。

 パーキングエリアで駐車位置を注意されたのに逆上したためだった。警察は男を過失運転致死傷罪容疑で逮捕。が、横浜地検は裁判員裁判の対象で、より重い罪である危険運転致死傷罪(法定刑の上限が懲役20年)での起訴に踏み切った。

 一方、この罪は運転中の事故を想定したものであり、法の不備が今回のケースで浮き彫りとなった。それでも検察が、事故と危険行為との因果関係の立証というハードル越えに挑む姿勢はうなずける。

 同時に、法律がこのような明白な悪質行為を相応に断罪できないのであれば、社会正義の実現に照らして改正を進めるべきだ。事故を教訓に、法律が再発防止の力となってもらいたい。