「秋の蚊の灯より下り来し軽さかな」(高浜…


 「秋の蚊の灯より下り来し軽さかな」(高浜年尾)。涼しくなってきて、油断すると朝は風邪を引きそうなほど。だが、厚めの毛布で寝るといつの間にか足で蹴飛ばしているから厄介だ。

 とはいえ、蒸し暑さは薄らいで過ごしやすい季節となり、机に向かっていても集中力が途切れることもあまりない。読書や勉強が進むし、食欲もわいてくる。

 秋は実りの季節で、野菜も果物も穀物も目移りがするほど豊富である。暑い時は胃腸も弱まるので、体調を整えやすい秋になって栄養価のあるものを欲するようになる。「食欲の秋」とはよく言ったもの。

 それに対して「読書の秋」は、戦後の文化政策、本を読むことで敗戦による精神的な痛手や文化力の低下から国を復興させるという意識的な運動に端を発していることはあまり知られていない。

 今年で71回目を迎える「読書週間」(10月27日~11月9日)は、終戦間もない昭和22(1947)年、「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」というスローガンで始められた。このため、本来は秋と直接的な関係はない。出版社・取次会社・書店と公共図書館、そして新聞・放送のマスコミ機関も加わって盛り上がり、やがて全国に広がっていったものである。

 この背景には、日本人が古来、読書によって海外の文化を受け入れてきたという歴史があると言ってよい。「読書の秋」というのは、もともと日本人になじみやすいものがあったのだろう。