親子の不思議で深遠な世界を見いだし、歌に…


 親子の不思議で深遠な世界を見いだし、歌に詠んだのは歌人の中河幹子である。大正時代末に超結社的な歌誌として「日光」が発刊され、北原白秋らによって推進される。中河はその自由な雰囲気の中で「吾児」と題する作品を作った。

 「幼児の小さき顔に顔よせてものをいひつつ涙いでけり」。母親の幼児に対する愛、幼児が母に返す美。これは人間自身に起因するというよりも、超越的な世界からやって来る神秘的な感情である。

 文芸評論家の紅野敏郎は中河の「歌の基礎」となったものとして高く評価したが、中河自身は歌集に収録しなかった。全歌集が没後25年の平成17年に刊行され、初めてこれら初期の作品が知られるようになる。

 幼少期が成長期間の中でいかに重要かは、中河が子供を歌い続けたことでも分かる。子供たちに世界の美しさ、面白さを発見させることも大切だ。そのことを実行してきた組織の一つが俳人協会。

 毎年夏、「こどものための俳句教室」を東京の俳句文学館を拠点に開き、今年で27回目。その作品集が出来上がった。吟行や発表会の写真も添えて、大人が俳句を楽しむ以上に家族ぐるみの楽しさが伝わってくる。

 「ひまわりがおひさまをみてわらってる」(小1 平野七々海さん)。笑っていると感じたのは吟行がワクワクするものだったからだ。保護者の句で互選最高点は「今日会つてもう仲良しの夏帽子」(中村かよさん)。優れた情操教育の場である。