北朝鮮が日本上空を越える弾道ミサイルを発射…


 北朝鮮が日本上空を越える弾道ミサイルを発射し、菅義偉官房長官は「度を超した挑発行動」と非難した。だが、北朝鮮は着々と核搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めている。「挑発行動」という表現は弱いのではないか。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は、かつて「弱者の恫喝(どうかつ)」と言われた。それが着実に性能を向上させ、文字通りの「恫喝」に近づいているように思われる。

 米国に自国を核兵器保有国と認めさせ、金王朝体制の存続を確実にするという目標は一貫している。時に政策のぶれを見せ、北朝鮮に核放棄させられない米国に比べ、北の方がはるかに戦略と戦術を有機的に機能させている。

 もちろん北朝鮮が、超大国米国を相手に危険なゲームを続けるのは、常に体制崩壊の危機を潜在させているからである。米国が本気になれば勝ち目がないことも十分知っている。「ソウルを火の海にする」という脅しは、恐怖の裏返しでもある。

 だから王朝維持のためであれば何でも利用する。今回日本上空を飛ぶコースを選んだのは、米国との安保協力を進める日本を威嚇し、日米同盟に揺さぶりを掛ける狙いもあっただろう。日本人の恐怖心を人質にしようということか。

 もちろん、いたずらに恐怖心を抱く必要はない。大切なのは、北朝鮮の脅威とそれへのわが国の対処力を冷静に分析すること。何が不足しているか、何をしなければならないかを明らかにして行動を起こすことである。