大気中の二酸化炭素(CО2)濃度が上昇し…


 大気中の二酸化炭素(CО2)濃度が上昇し海洋の酸性化が進んでいる。海洋環境保全のための指標として、サンゴの生態の状況が、よく取り上げられるが、その悪化ぶりは、このところ見るに忍びないほどだ。

 小笠原諸島・父島などの造礁サンゴの骨格形成に悪影響が生じ始めていると、海洋研究開発機構などのチームが発表した。サンゴの弱アルカリ性の体内環境を維持するのが困難になっているという。

 2年前、早稲田大学で行われた日本海洋政策学会で、同機構の白山義久理事が「温暖化と酸性化の複合影響で沿岸域で予想される変化」として、造礁サンゴの異変、生物多様性の減少、大型藻類の減少などを挙げていた。

 その変化が既に沿岸域を越え、太平洋の中にまで広がっていることが分かったわけだ。この2年間、行政はまったく手をこまねいていたわけでもなかろうが、事態はどんどん悪い方に進んでいる。

 サンゴの白化対策については、水産庁が9年前、沖縄県座間味村の阿嘉島で育てたサンゴの種苗約5万5000株を日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)に移植している。どれほどの成果があるか分からないが、世論の高まりがあって可能になった。

 「科学情報と政策が必要とする情報の乖離」(白山理事)は深刻で、人工多能性幹細胞(iPS細胞)開発者の山中伸弥京都大教授のように、この分野でも自ら資金集めに“走る”科学者リーダーが必要かもしれない。