歌舞伎の市川海老蔵さんの長男、勸玄君が…


 歌舞伎の市川海老蔵さんの長男、勸玄君が、東京・歌舞伎座での公演「駄右衛門花御所異聞」で、宙乗りを初披露した。4歳での宙乗りは歌舞伎史上、最年少という。海老蔵さんに抱かれ空中飛行した勸玄君、観客に手を振る余裕も見せた。

 母親のキャスター、小林麻央さんが亡くなってまだ間もない。その悲しみを乗り越えて成功させてほしい、と見守ったファンも大喜びだ。可愛らしく、そして堂々とした舞台だった。

 この姿を麻央さんに見せてあげたかったと思ったファンも多かったろう。テレビを見ていると、まさに宙乗りのその場で、海老蔵さんが勸玄君に何かささやいていた。「ママいたね」と語り掛けたようだ。

 宙乗りが大きな見ものとなっている歌舞伎の演目といえば『義経千本桜』の「河連法眼館の場」が有名だ。幕切れの際に源九郎狐が宙乗りをする。

 宙乗りは江戸末期に盛んに演じられたが、明治以降、芸術性や格調を重んじる傾向の中で外連の芸として疎んじられる。一度廃れたその芸を本格的に再興させたのが、三代目市川猿之助(現猿翁)さんの「スーパー歌舞伎」だ。この5月、四代目猿之助さんが大阪松竹座「五月花形歌舞伎」の「金幣猿島郡」で宙乗り1000回を達成した。

 現在4歳の勸玄君、これから何回宙乗りを見せてくれるだろう。芸術性、娯楽性、庶民性など多様なものを包摂したのが歌舞伎の宇宙であり、その魅力の源泉である。