トランプ米大統領が「パリ協定」からの離脱を…


 トランプ米大統領が「パリ協定」からの離脱を表明した。中国に次ぎ世界第2位の温室効果ガス排出国である米国の離脱は、地球温暖化対策への大きな打撃だ。

 米中に加え、途上国にも削減目標を義務付けた同協定は、前の京都議定書とは違い、実効性が期待されている。これまで大量に温室ガスを排出してきた先進国と途上国の言い分を折り合わせた苦心の産物だ。

 それを「米国第一」を掲げるトランプ氏は「不公平」と言って見直しを要求する。「米国民や企業を守る新たな協定を交渉し、米国を偉大にする」と述べているが、これで米国が偉大な国として尊敬されるかどうか。

 それ以上に心配なのは、自由と民主のリーダーたるべき米国の指導力がますます低下していくことである。「米国はこれからも環境で世界のリーダーであり続ける」という大統領の言葉が空(むな)しく響く。

 米国離脱によって発効への動きが停滞している環太平洋連携協定(TPP)にしても、国際ルール作りをどの国が主導するかという問題に直結していた。先月北京で開かれた「一帯一路」国際協力サミットで、中国は自由貿易の振興を謳(うた)い上げた。一方の米国は、G7サミット(先進7カ国首脳会議)の宣言に「保護主義と闘う」との文言を入れることにしぶしぶ同意した。

 既に立場の逆転現象が起きているが、米国のパリ協定離脱で、中国が国際社会での発言力を増し、欧州諸国もこれまで以上に中国寄りとなるだろう。