地震学者のロバート・ゲラー元東大教授が…


 地震学者のロバート・ゲラー元東大教授が「日本政府は地震予知ができないことを認めるべきだ」という論考を英科学誌ネイチャーに掲載し話題になっている。1984年の来日以来、地震研究が予知に偏っていることに疑問を抱いてきたという。

 具体的には、東海地震の発生に備えた法律が地震の前兆現象の観測を前提にしていることや、南海トラフ地震などの大地震が周期的に起こるという考えに基づき、発生する確率を算出していることについて「科学的根拠はない」と指摘している。

 わが国では65年に国家的プロジェクトとして地震予知の研究が始まった。その時には前兆現象を見つけるべく、地震学者がせっせと観測網づくりに励んだ。それにもかかわらず、一度として予知ができたことはない。

 確かに被害を減らすのであれば、地震発生の1日前には予知できるくらいのレベルが求められる。また「発生する確率」ばかりを言い立てる日本の地震学者に、文句の一つも言いたくなるゲラー氏の気持ちも理解できる。

 しかし、それでもこれまで政府の目指してきた方向性が間違っていたとは必ずしも言い切れない。今日、大半の地震学者は、予知を標榜(ひょうぼう)しながらも「災害軽減のための観測研究」を行っている。

 2014年には、地球を取り巻く電磁気現象こそ地震の前兆とする「日本地震予知学会」も生まれた。「予知」は地震学者を発奮させる研究テーマなのだ。