福井県高浜町の高浜原発4号機(関西電力…


 福井県高浜町の高浜原発4号機(関西電力、出力87万㌔㍗)が約1年3カ月ぶりに再稼働し、その翌日「臨界」に達した。全国で運転中の原発は3カ所4基になった。

 原子力規制委員会の新規制基準に合格していた同3、4号機は、本来であれば昨春から運転を続けているはずだった。しかし滋賀県の住民ら29人から出された2基の運転差し止めの仮処分申請を大津地裁が認めたため、稼働中の原発が止められるという異常事態となっていた。

 東京電力福島第1原発事故を受け、規制委の安全審査はできる限りの厳しいものとなっている。だが現在の科学で自然現象を全て予測することは不可能であるというのは、国民の共通認識と言っていいだろう。

 その事実を踏まえると、原発に「ゼロリスク」を求めた大津地裁の決定は、再稼働阻止のためにしたものとみられても仕方がない。「絶対安全を求めると、結局は安全神話に陥る」とは規制委の田中俊一委員長の指摘だ。

 昨春、この高浜町とその周辺を取材したが、地元の経済が振るわず、原発再稼働を声に出して願う人も少なくなかった。護岸工事などを含めた原発関連事業を引き受ける地元の中小企業だけでなく、一般の小売店の主人らも同様だった。

 原発は周辺地域の共有財産であり、安全性の確立も地元住民の協力なしにはスムーズにいかない。再稼働をめぐっては、事業者だけでなく住民が利益を得ている側面も決して軽視できないことだ。